不動産屋さんにとってのよい客・・

 アルプスを眺めながら暮らしたい・・最初、そう思って安曇野に中古住宅を探していたときの不動産屋さんは、本気で相手にしてくれなかった。
「都会の人はどうしてもこの場所に家が欲しくて探しているのではないでしょう・・」と言われた。「他所にいい物件があればそれっきりなんだから、努力して探してあげる気にはならないんですよ」 露骨に言えばそういうことだったのだと思う。遠くから訪ねて行って、直接会っても、私たちのために働いてくれることはなかった。妻が、インターネットに掲載されていた物件の資料を請求すると、「はいはい、お送りします・・」と言うのだが、それっきり何の連絡もなかったりした。
 とうとう妻は、私に職場から不動産屋に連絡するようにさせた。「女には返事が来ない」と言うのだ。実際のところ、決定権を持っているのは妻だし、お金だって妻のほうがたくさん持っていたりするのだが、地元密着型の不動産業者には未だに昨今の家庭の事情は理解できていないらしい。
 その点、田舎暮らし物件を専門に扱っている不動産屋さんは、妻にも必ず返事を寄越した。しかし、美しい写真とお手頃な価格に魅かれて見に行っても、大抵の場合、住みたくならない理由・・写真に写っていない何かを発見することになるのだった。
 そういう中で、この不動産屋さんに行き当たった。
 この家は不動産屋さんの持ち物になっていた。前の持ち主さんは、家や庭を管理し、境界確認にも立ち会ってくれたが、私たちの契約の相手は不動産屋さん。したがって、手数料もいらないし、瑕疵担保責任も受けてもらえるし、安心して買うことができた。
 安曇野でだったら、この広さの宅地を買うのには、土地だけで、ざっと三倍のお金を払わなければならないだろう。この家を私たちに売りたい・・と思ってくれた不動産屋さんに出会えたことは、本当に良かったと思う。

Designed by CSS.Design Sample